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古橋と花宮と今吉さん。
古花で今古でする。














花宮の姿を探して桐皇学園の校内を歩く。
「……」
知らないつくりに辟易しながらも、古橋が目指したのは屋上。
あの姿を見失ったのは一瞬だった。





『今吉先輩っ』と、引退したはずの人の名前を呼んで、駆け出した花宮の背中は確かに確認したのに。
古橋が追いかけて出た時にはもう姿はなく、見慣れぬ他校の風景だけがあった。
「花宮」
「あーあー……」
呆然と花宮の名前を呟く古橋の隣に苦笑ともつかぬ笑みを浮かべた青峰が並ぶ。
薄い唇を歪めて「やられたな、アンタ」と面白そうに囁いた。
一つ年下の喰えない青峰を一瞥だけして、古橋は一歩踏み出す。
「あの人ならきっと屋上にいるぜ」
「…………あぁ」
背中にかけられた声に頷いてもう一歩。
ふ、と古橋は振り返って青峰に「すまん」と軽く顎を引いた。
「はっ! 構わねぇよ、っつーか謝るのはこっちだしな、多分」
面食らったような顔で青峰が手を振る。
さっさと迎えに行って来い、と。それに頷くと古橋は走り出した。





ゆっくりと階段を上がる古橋の目の前には鉄の扉。
ギィ、と重たい扉を開ければ吹き込んでくる風。
咄嗟に腕で目を庇った。
それでも進む背後でバン、と扉が閉まる。
目を刺す光に視界が白くなった。
「遅かったのう」
声のする方へと古橋が顔を向ければ制服のままコンクリに座りこんだ今吉と、その足を枕に眠る花宮の姿。
無事な花宮に、古橋は緩く安堵の息を吐きだした。
「花宮を返せ」
「もうちょい、寝かしたったらな」
白い今吉の指先が花宮の目の下を撫でる。うっすらと浮いた隈。
どこまでも優しさを滲ませる指先に嫉妬する。
「そんな目で睨まんとって」
こわいわぁ、と。ひんやりとした今吉の視線が古橋に刺さった。
花宮から離れた今吉の指先が古橋を呼ぶ。
「…………」
請われるまま古橋が今吉の隣に膝をつけば、かすめ取るようなキス。
間近で絡み合う眼差しに揺れはない。
触れ合った今吉の唇は、微かにタバコの匂いがした。
「煙草……」
「あぁ、せやな」
不快感を示せば、クツクツと楽しそうに今吉は笑ってポケットから少し潰れた煙草を取り出す。
トン、と花宮を乗せていない方の足で底面を叩いて一本取り出し口に銜えた。
「なぁ、古橋」
「はい」
ライターを握ったまま、今吉は古橋を見上げる。
今吉の薄く形の良い唇が歪んだ弧を描いていた。
嫌な予感がするな、と思いながら古橋は静かに返事をする。
ツゥ、ともともと細い今吉の目が弓なりになり、口を開く。
「自分、花宮が好きか」
「…………」
考えて、考えて、古橋は首を振った。
好意と言うにはこの想いは重く、醜いから。
瞬きを一回。息を吐き出しながら「そうか」と今吉は銜えた煙草に火を点けた。
「………………」
ゆっくりと吐き出される紫煙。
億劫そうにもう一度吸い込んだ息を吐きだして、今吉は煙草を持つ手と逆の手で花宮の髪を梳いた。
スースーと静かに眠る花宮は目を覚まさない。
「それでも、自分、コイツの傍におるんか」
「花宮が望む限りは」
キッパリと答えた古橋に今吉の眉が下がった。大きく吸い込んだ息、ゆらゆらと上がる紫煙の隙間から「自分、酷いやっちゃなぁ」と声が零れる。
ゆるゆると花宮の髪を梳き、ゾッとするような視線を古橋に向けた。
「覚悟はあるんやろうな?」
「愚問だ」
即座に返した古橋に今吉は唇から煙草を引き抜く。
チロリ、と今吉の唇から紅い舌先がのぞいた。
鼻腔を刺すニコチンの香に古橋の眉が微かに寄る。
「返事だけなら誰にでもできるわ。腕、出し」
「……」
冷たく命じる声に、古橋は何をされるのか即座に理解した。
理解した上でジャージを脱ぎ、下に着ていたTシャツの袖を捲る。
露わになった古橋の日に焼けぬ白い二の腕。
ク、と咽喉の奥で笑った今吉は「良くわかっとるやないか」と花宮の髪を梳いていた手で古橋の頭を撫でる。
「えぇ子やね」
慈母にも似た笑顔のまま、今吉は徐に火の点いたままの煙草を古橋の腕に押し付けた。
ジュ、と鈍い音。
反射的に古橋の腕が跳ねる。
「ぐ、」
「うん?」
ひゅう、と古橋の咽喉が鳴った。
脂汗が額に噴きだす。ジジ……、と肉の焦げる嫌な臭気が上がった。
ガクガクと震える古橋の腕。顔色一つ変えずに今吉は煙草の火を押し付け続ける。
頭を撫でていた今吉の手はゆるゆると短い髪を掻き回したまま。
「…………っ」
「まぁえぇかな」
煙も上がらなくなった頃に離れていく火の消えた煙草。
真っ青な顔で唇を噛み、悲鳴を噛み殺す古橋の唇を不意に今吉の指が割った。
「そんなキツく噛みしめたら切れてまうで?」
「っぐ」
下唇を無理やり押され、意趣返しのように古橋の歯が今吉の指に食い込む。
ガリリ、と言う感触に一拍遅れて咥内に広がる鉄錆の味。僅かに古橋の口角が上がる。
その表情に酷薄そうな笑みを浮かべると、今吉は伸び上がって火傷の痕に舌先を這わせた。
「ぁぐっ……」
くぐもった悲鳴とともに、今吉の指を噛む古橋の力が強くなる。
それに薄らと笑って今吉は生理的な涙を浮かべる古橋の目元に唇を寄せた。
零れる前の涙を舐めとって、囁く。
「今回は、及第点や」
落第せんようにきばりや、と耳朶に歯を立て離れていった。
ふーふー、と肩で息をしながら古橋が噛んでいた今吉の指を放す。
くっきり歯形が付き、赤の滲む己に指に今吉は緩く笑って。
「可愛えぇなぁ、自分も」
花宮も、と続く言葉は直接、重ねられた古橋の咥内へと消えた。
あっけなく古橋から離れた今吉の唇は舌先で唇をなぞり、唾液に混じった赤を舐めとる。
そのまま顎を、咽喉を伝い、今吉は古橋の肌に吸い付いた。
チクリ、と小さな痛みが走り古橋が不快そうに顔を歪める。
それを視界に収め、今吉は心底愉しそうに笑い言い放った。

「あとで、ウチくるやろ?」



+++++
恋も愛もよくわからない。

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しん
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非公開
自己紹介:
今吉さん狂の文字書きレイヤー。喋る雑食。
年齢職業不詳な変な人。
好きなものは友人、ピアス、刺青、センチメンタルサーカスの団長さんにテディベア。
蝶、龍、蜘蛛(非生物)、植物、空、海、月。お茶、紅茶、珈琲、柑橘系果物(特にグレープフルーツ)
熱しやすく冷めやすい。迷惑体質。接触嫌悪症。
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