没原稿2

きっと今月本のボツ原稿。
黒子と伊月さん。

生暖かくなってしまった額のタオルを引っくり返して目元まで覆う。
「焦らなくていいんですよ、伊月先輩」
　真っ暗な視界の中、伊月が息を飲んだ気配を感じながら黒子は続けた。
「誰もあなたを責めません」
「黒子……」
　途方に暮れたような声で伊月が黒子を呼ぶ。
　どうしてこの後輩はこんなに敏いのだろう、と伊月は眉を下げた。
「ボクは、笑っている伊月先輩が好きです」
　だから伊月先輩が笑えるのならボクは味方です、と続く黒子の言葉に嬉しさ半分、情けなさ半分。
「……ありがと、な」
　ずりずり、と床を移動して伊月は黒子の隣にまで移動した。さらり、淡い色の髪を撫でる。
「いえ」
　素っ気ない返事に目を細め、伊月はさらりさらりと黒子の髪を梳く。胸の中でごちゃごちゃになっている感情の整理は未だつけられそうになかった。


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愛され伊月さん。